建設現場の働き方改革は浸透するのか?

「働き方改革」とは?

現在、開会中の国会にて「働き方改革」関連法案の採決が行われています。安倍晋三首相が最重要法案と位置づけるものです。近年、「働き方改革」という言葉をメディア等で目にする機会が増え、少し調べてみました。

 

ここ1年くらいの話かと思っていたら、実はもう少し古くから進められている改革で2015年4月の労働基準法等改正案の国会提出からの一連の流れのようです。時間外労働割増賃金の見直しやフレックスタイム制の見直し、高度プロフェッショナル制度の創設などが当時は話題になったようです。

 

都知事が小池都知事に変わり、都庁も20時完全退庁を宣言していましたね。「働き方改革」という言葉はかなり浸透してきたように感じますが、実際の労働現場に浸透しているかと言われるとそうでないように感じます。相変わらず日本の有給取得率は低いし、長時間労働による自死や過労死といった問題もまだまだ目につきます。しかし、若い人を中心に考え方が変わってきているのも事実のように感じます。給料が安くても休みを取りやすい職場を希望する若者が増えていますし、就職説明会ではノー残業デーや有給取得率をアピールする企業増えています。


建設現場での「働き方改革」の浸透度は?

では、各団体が進める「働き方改革」は建設現場まで浸透しているのでしょうか。各現場によって違いはあるものの、まだまだ不十分だと思います。相変わらず、近所の現場は土曜日も工事を進めていますし、道路工事は夜間に行っています。内装業をやっている知人も朝6時に家を出て、帰宅が9時過ぎになると言っていました。

単純計算では、通勤時間を合わせて330時間/月も仕事に縛られることになります。

前述した有効求人倍率をみても、担い手が増えているとは言えません。なぜ、現場レベルまで「働き方改革」が浸透しないのでしょうか。ここでは3つの理由について考えてみたいと思います。

(1)金銭的問題

一つ目の理由は、お金の問題です。多くの工事ではゼネコンが工事を行いますが、ゼネコン1社ですべての工事をできるわけではありません。そこには協力業者や下請業者がいて、下請けのさらに下の孫請業者やさらにその下の・・・というような複数の企業が協力して工事を進めています。発注者は、それらのトップである元請業者(ゼネコンであることが多い)と契約を結び、お金もすべて元請企業に払います。

 

発注者は元請業者にしかお金を払わないので、下請業者は元請業者からお金をもらう必要があります。元請業者と下請業者で契約を交わすのですが、零細企業や末端の作業員は日払い形式のことが多いです。そのため、いままでは週休1日で月25日くらいあった勤務日が週休2日となり月20日くらいに減ると給料が減り困るわけです。これを解消するために発注者(公共工事であれば国や自治体)は労務費や経費に係数を掛け、週休2日になっても作業員の給料が減らないよう対策をしていますが、まだまだ作業員まで行き渡らないことが多く、結果、作業員は生活のために土日や夜間の作業を行う必要が生じてくるわけです。とはいえ、徐々に元請業者と下請業者の契約形態も変わってきており、今後の変化に期待したいです。

(2)時間の問題

二つ目の理由は時間です。考えてみてほしいのですが、道路工事を昼間にやっていたら渋滞が起きてしまいます。学校では長期休みにしか大規模な工事はできません。こういった制約や、利用者への影響が少ないように配慮した結果、夜間や土日の作業となる工事もあるのです。これについては現在の技術では対応が難しいですが、限られた時間の中でより効率的にやることで少しでも労働環境を良くしていくことはできると思います。

(3)人材の問題

三つ目の理由は人です。担い手不足が深刻な建設技術者は高齢化が進み、現場には70代の作業員もいます。慢性的な人材不足により、複数の現場の掛け持ちや片道3時間かけて出勤する作業員なども多く、非効率的な作業や事故の基にもなっています。外国人技能実習生を受け入れている現場もありますが、日本語の理解が不十分で、事故の発生や品質の低下を招いている現場も多いと感じます。人手不足を解消するための「働き方改革」ですが、人手不足のため「働き方改革」が実施できていないのが実情だと思います。

今後の取り組みについて

ここまでが、私が感じた建設現場での「働き方改革」の実情です。まだまだ「改革」と呼べるような変化はありませんが、同時に、少しずつ変わってきていることも感じました。作業員の中には仕事とプライベートを両立させている方もいますし、子育てに積極的な作業員も多いです。もちろん、女性の作業員もかなり増えてきており、活躍が目立ちます。公共工事の発注でも週休2日を指定したものが少しですが出てきました。


 

現状では国の工事のごく一部でこういった動きがあるものの、今後これがモデルケースとなり、自治体レベルや民間での工事でも「働き方改革」を意識したものが増えることだと思います。「働き方改革」は工事を発注する側だけでは成り立たず、実際に工事を行う現場サイドでも進めていかなくてはなりません。各建設業者においてもICT技術の導入等による現場の効率化を進めることが必要です。

 

すでに大型のデジタルサイネージを現場に導入し、イラストや写真による現場説明を行っている現場や、スマホのアプリで工程管理を行っている現場も増えてきています。独自にシステムを開発し、現場の効率化を図ろうとしている企業も多いです。こういった取り組みが評価される入札方式も増えてくることが予想され、徐々に「働き方改革」も建設現場に浸透していくと日本の建設業界も変わるかもしれません。


建設会社の時短を図る電子掲示板

労働時間への着目

そんな「働き方改革」ですが、建設現場にはどのように影響しているのでしょうか。まずは、制度的なものから調べてみました。建設関係の業界誌を見ると、「働き方改革」や「休日取得」、「週休2日」などのワードを見る機会がかなり増えたと思います。

 

特に、国が進める改革だけあって公共工事での変化は着実に表れています。国土交通省中部地方整備局は週休2日の実現にむけて、完全週休2日を履行した工事を対象に取得証を発行し、総合評価で加点する優遇措置を検討しているそうです。全国建設業協会は18年度から「休日月1+(ツキイチプラス)」を展開しており、埼玉県建設業協会もこれに取り組むことを決定しました。

 

また、5月14日に行われた国土交通省と日本経済団体連合会(経団連)の懇談会でも、i-Constructionの推進により、「週休2日」を推進するとの話が出ていました。i-Constructionとは、ICT(情報通信技術)の活用等の施策を建設現場に導入することによって、生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みとのことです。要は、ハイテクな技術を活用して工事の効率を良くし、品質も向上させましょうということです。代表的なものは航空レーザーによる海中の測量や360°画像の活用などですかね。話を戻しましょう。

「働き方改革」への取り組み

なぜ、各団体が「働き方改革」に積極的に取り組むかというと一番大きな理由は建設業の担い手不足解消だと思います。公共職業紹介所(ハローワーク)における、2017年の建設技術者の有効求人倍率は5.61倍で調査を開始した01年以降で最高値だったそうです。建設技術者の人材需要は急激に逼迫(ひっぱく)してきており、深刻な人手不足になってきています。今後10年間で6.7万人が減少するという推計もあるようです。

 

東日本大震災の復興が始まった時に、東北地方以外の公共工事の多くが不調となりました。建設技術者の多くが、復興支援工事に従事してしまったためです。それ以来、建設技術者の労務費も上昇を続け、最近では東京オリンピック関連の工事が始まり、さらに人手不足となっています。オリンピック後も老朽化インフラの改修などが控えていることから、建設技術者の深刻な不足は続くと考えられています。建設技術者がいなければ工事ができないため、担い手確保に努めなければなりません。かつての3K(きつい、汚い、危険)というイメージを払しょくし、若い人を中心に建設技術者を確保していくことが重要になるため、各団体は「働き方改革」を進めているわけです。

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Questar

見える化アプリ開発、業務用アプリ開発、オフショア開発会社として、2012年クエスタ株式会社設立された。建設業界の現場のニーズに応えるIoTをハードウェア、ソフトウェアの両面の開発。