電車の中の広告に心を奪われた。
毛利さんは二度目の宇宙飛行から帰ってきたところでした。「地球を見ながら、ふっと思ったんだよ。糸でつながれているんじゃないかなって」と毛利さん。
「それでね、思わず地球を見直してみたんですよ。地球をぶら下げている糸がないかどうか。
周りをよーく見てみたんだけど、やっぱり糸になんてつながってないんだね」
毛利さんはまじめにそう言って、にっこり笑っていました。
地球が糸でつり下げられていないことぐらい、常識中の常識です。二回も宇宙に行った人が何を言うんだろう?そんなこと当たり前じゃないか、と僕は思ってしまいました。
ところがその後、僕自身が、実際に宇宙に行ってみたら、なぜあんなことを毛利さんが言っていたのか、よくわかったのです。
地球を目の前にすると、不思議なことに僕も同じように思いました。「これ、誰(だれ)かが作って回しているんじゃないかな?本当に、浮(う)いているのかな?」と。
果てしなく広い漆黒(しっこく)の宇宙空間のなかに、ぽんと浮かんでいる地球の姿はあまりにも完璧(かんぺき)に見えました。だから、かえって信じられないような気さえしてきて、目を凝(こ)らしてしまうのです。
地球が宇宙に浮かぶひとつの星であること、それが青く丸いこと、自転していること……。
当たり前だと思っていたそれらのことを、もう一度自分の目で見て問い直そうとしてみる。
それが、宇宙から地球を見たときに僕の心に起きた現象なのです。
他愛のない文章だが、これを読んで不思議だなと思ったり、好奇心をくすぐられたり、宇宙の不思議を、知ってみたい、行ってみたいなとか、
と思う人がどれだけいるのだろうか?
そう感じた。