i-Constructionと建設業界の革新

私の職種が消える!?

数年後にはロボットやAIが多くの仕事を行うようになり、現在、人がやっている仕事の多くがロボットやAIに置き換わる。こういった話を最近聞く機会がありますが、どうなのでしょう。なくなる職業や仕事の一覧なんかも出ていて、経済誌なんかでも特集されていたりします。自分の職業が入っていたら心配になりますね。

私の働いている建設業界でも将来はロボットやAIに奪われる仕事があるのでしょうか。オックスフォード大学が認定した、あと10年でなくなる仕事には、測量技術者、地図作成技術者、建設機器のオペレーター、塗装工、壁紙張り職人、などが含まれていました。測量なんかは、衛星を活用して測量をする技術は出来上がりつつありますし、機器のオペレーターについても、自動運転や作業員が簡単に操作できるようになるのは想像できそうです。地図作成は、CADで書くのを自動でやってくれるということでしょうか。塗装や壁紙張りはお掃除ロボットみたいなものが自動でやってくれるということなのですかね。新築の障害物がない場所であれば可能かもしれませんが、実際はというと、近年は改修工事の需要が多く、壁には設備機器の配管や窓もあり、細かい部分は手作業にならざるを得ないところだと思います。しかし、こういった技術は人をわくわくさせ、従来の不可能を可能にし、新たな可能性を広げるのも事実です。今後も、技術の進歩には注目していく必要があります。

 

建設業界の革新

夢のような技術革新の話も面白いですが、もう少し身近なところに迫って、現在の建設現場ではどのような最新技術が用いられているのか、調べてみました。

現在、国土交通省はi-Constructionを進めています。国土交通省のホームページによれば、「ICTの全面的な活用(ICT土木)等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取り組み」、だそうです。2016年度より導入されている新基準で、i-Constructionの利用を義務づけるため「土木工事施工管理基準」などを見直す方針となっています。国土交通省が推進しているため、当然のように建設業界全体でも様々な取り組みを行っております。2018年4月に茨城県土木部長に就任した伊藤淳史氏は生産性向上施策の1つであるICT活用工事を、17年度の12件から30件程度に増やす、と目標を掲げました。2018年5月には土木学会が会長特別委員会として設置した「国土・土木とAI懇談会」が開かれ、「インフラ・国土管理における土木とICTの融合に関する提言」をまとめ、施策展開などに期待を込めました。民間レベルにおいても、NJSとJFEプラントエンジが共同研究を行い、下水道設備の革新的な診断技術を開発しています。非GPS(全地球測位システム)空間で自立飛行し目的物の画像情報を取得できるドローンの開発にも成功したそうです。これにより下水処理場内の機器の劣化診断の精度が向上し、コストや手間、危険の軽減ができるそうです。他にも、大京穴吹建設、穴吹きカレッジサービスと独自の施工管理システムをベースに帳票やワークフローを一元管理する「D-SHIP」を共同開発しました。従来の施工管理業務を電子化し、効率的に行うことができるそうです。

 

先進技術の建設業界への応用

建設会社が独自で開発を進めている技術ばかりではありません。重機のメーカー等はMC/MG(マシンコントロール/マシンガイダンス)技術を開発し、すでに多くの現場で用いられています。これは、3次元設計データを搭載した重機により掘削、敷き均し等の作業をオペレーターによる操作なしで施工できるものです。従来は経験豊富なオペレーターが行っていた作業を簡単に実施でき、すでに多くの実績もあり、作業日数やコストを削減できています。施工管理アプリを開発している企業もあります。各種工程管理や帳票のやりとりをクラウド上で行うことで、簡単に情報共有ができ、天候等による変更も楽に行うことができます。他には、デジタルサイネージの製作、販売をしている企業もあります。デジタルサイネージは、従来は広告として活用されることが多かったのですが、その拡張性の高さから建設現場でも多く見かけるようになりました。大画面に任意の画像や動画を映すことができるため、外国人労働者への作業手順の説明や全体朝礼時の情報共有が容易になります。外部向けに週間工程表や動画の掲示により近隣への説明責任を容易に果たせる点も利点です。UAV(無人航空機)測量を行っている会社も増えてきました。ドローンは建設現場のみならず、多くの場所で利用されています。こういった技術は建設会社が研究しているものよりも、外部の企業から購入することができるため、多くの建設現場で普遍的に利用されやすいです。

 

建設業界の先進化に伴う技術革新の考察

ここまでは、建設業における具体的な最新技術を紹介してきましたが、i-Constructionによりどのような変化が得られるのでしょうか。現在、建設業界が抱える問題を交えつつ、考察してみたいと思います。考える上でi-Constructionが目指すものとして掲げられている①生産性の向上、②魅力ある建設現場、③事故をゼロに、④新3Kに、というのが参考になるかもしれません。

生産性についてですが、ICT技術やAI、IoT技術を効果的に導入することができれば、向上するでしょう。生産性が向上すれば企業の経営環境も改善され、作業員の時間外労働なども減り、ワークライフバランスのとれた職場に近づくことができます。

次に魅力のある建設現場ですが、生産性が向上し、職員のワークライフバランスがうまくとれた経営環境のよい会社であれば当然、魅力あるものとなるでしょう。生産性の向上により経営環境が改善されているため、賃金や休暇もよいものとなっていきます。すると、政府が進める働き方改革にも準じたものになり、さらに良い人材が集まり、さらに生産性が向上する、といった良いスパイラルが生じます。

事故をゼロにすることも、前述と同じように良い効果です。賃金が高く、休暇の比較的自由で、会社の経営状況が良くても、事故の多い現場では意味がありません。無人の重機やドローンでの測量は人に対する危険度を低下させ、事故を少なくすることができる技術です。工具類の安全装置もセンサーなどによって安全性を高めることができます。そういった直接的なものだけでなく、デジタルサイネージの活用により、工事手順に対する理解を深めたり、効率化による十分な作業時間の確保も事故を減らすことにつながるはずです。

最後に新3Kに、ということですが、従来の建設現場は3K(きつい、危険、きたない)と言われて、敬遠されていました。新3Kは、給与、休暇、希望の3つで、i-Constructionの導入により実施を目指しています。

 

変わりゆく建設工事

現在の建設現場は人材不足であり、作業員の確保が難しい現場も多いです。i-Constructionの導入により各現場が効率化され、少ない人員で作業を行うことができるようになれば、人材不足に対しても効果が期待できます。作業員にしても、従来は数多くの現場を掛け持ちし、時間外の作業が多かったものが、少なくなれば休暇を取り家族と過ごす時間が増えたり、一つの作業に費やせる時間が増加したりすれば、事故の減少や品質の向上につながります。品質が向上すれば、価値が上がり、賃金も増えていく正のスパイラルが生じれば、建設現場に携わるすべての人にとって良いはずです。新しい技術の導入にはパワーが必要で、反発もあるかもしれませんが、時代の流れはすでに最新技術の導入に向いています。まずは、手軽に利用できる建設工事ようのアプリやデジタルサイネージを導入し、一度体験してみると、その便利さに驚愕し、利用を辞めることができなくなることでしょう。2018年度はi-Constructionは進化の年と位置付けられていますが、どのように深みをましていくのか注目していきたいです。

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Questar

見える化アプリ開発、業務用アプリ開発、オフショア開発会社として、2012年クエスタ株式会社設立された。建設業界の現場のニーズに応えるIoTをハードウェア、ソフトウェアの両面の開発。